カッティング 〜Case of Mio〜 感想。多分ネタバレ注意警報。
なんか気恥ずかしくなってきたらすぐ消す


この作品は、ちょっと変わった少年少女の純愛すとーりーだ。

こう書くとなんかパッと見に違和感を感じるけど、
思い返してみれば結局のところこういう事だった。
勿論あくまで話の核は惚れた腫れたでもないが、
物語としてはサイコサスペンスではなく間違いなく純愛なのだ。

主人公、相坂カズヤとヒロイン、西周ミオが付き合い始める事でこの話は始まる。
しかし、付き合っているのに、いるだけ、という関係。
この放課後読書のシーンが二人の「変人」っぷりをよく表してくれる。
どこかおかしい少年と見るからにおかしい少女。
異常な二人は惹かれ合う、とかは無く互いにどこか冷めてる。ミオに至っては露骨に。
しかし会話を重ねるうち、互い、主にミオの、壁のようなものが崩れかかっていく。
そして家庭事情やら伏線やらを挟み、しまいにはデートすらしてしまう。
この異常から普通になっていく描写が非常にこそばゆく微笑ましくて良かった。


描写、文章はとにかく素晴らしかった。
丁寧で、しかしクドくない、絶妙のバランスだったわ。
すっきりとした綺麗な文体は非常に読みやすくすらすら進む。
基本的に三人称一人視点で語られているが
時にはおどけて、時にはちぐはぐに綴られる地の文が状況によく噛み合って上手い。
比喩表現なんかもお洒落だが気取りすぎておらず良い。
台詞回しはメイン登場人物達の性格上小難しくゴテゴテした感じになってるが
要するに言いたいこと、が分かればすんなり飲める。


主人公。相坂カズヤ。
この作品で一番『良かった』キャラといえば間違いなくこいつを挙げる。
一見普通で、しかし何かがおかしかった少年。
読者側でも、カズヤ本人とはちょっと違う形でこいつに何か違和感を覚える。
クールで気障で優しくて、しかしどこか引っ掛かる。そう、特に心理描写に。
そしてソレが明らかになった時、読み返すまでもなく「あぁ、そうか」とすぐ納得できる人格描写が絶妙。
ソレに気付いた後のカズヤは、真っ直ぐだ。だから感情移入を誘う。
これらの積み重ねがあったからこそ、学校屋上の『告白』がかっこいい。


ヒロイン、西周ミオ。
彼女はヒロインでよかった。主人公や脇役じゃ多分そんな活かされない。
あくまで感情を抑えて振舞おうとする少女。
自傷の原因は実際想像してみ難いだけに凄絶に感じる。
でも結局根本としては不器用なだけの女の子なんです。
それがいい。


沙姫部みさき先輩。
よく出来た人。
あまりに出来すぎていて僅かに違和感を覚えたけど
それさえフォローされてて感動。


さてここまで殆どベタ褒めしてきたけど
やっぱりウボァーな点もある。
まず前途の通り前半は素晴らしかった。起承転結の起承。
しかし、後半は前半と比べるといまいち見劣りがした。
特に最後の舞台、学校のあたりはなんか。
話の根本自体はしっかり残ってるんだけど、余計な肉が付きすぎたというか。
ていうか西田。こいつですこいつ。余計な肉。
描写不足のせいか、ただアハアハ笑って無理矢理バトル始めてなんか悟って死んだようにしか。
被検体なだけにえぐい過去とかあるはずなのになんかそれ程印象に残らない。
思想語りもなんか妙にぺらぺらしててラスボスにしてはちゃちい。
この物語の後半をいまいちにしたA級戦犯。


まぁ総括としては、かなり面白い部類に入りますた。
出版社は聞いた事も無かっただけに
偶然な繋がりでこの作品知れたのは幸運ですた。


そういえばこの作品知る切欠にもなった絵。
他の登場人物もさる事ながら、やはりミオ。これに限る。
ミオというキャラと絵の雰囲気がやばいくらい噛み合ってる。
先に本編だけ読んで後からイラスト見せられても多分めっちゃすんなり来るぜ!
さすがはm氏。も氏って書くとすんげぇ違和感あるから。m氏。
呼び捨てとかだともっとわかりづれぇんだろうなぁ。どうでもいいな。


とりあえず感想こんなもん。
後日読み直すだろうからそん時思った事また書き足したりしようかしら。
感想は二周目が本番だぜ!

戻りすとかってぃんぐ